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無電解ニッケルめっきの話 [ガレージ関連]

※今回の記事は個人で可能な作業からは逸脱していますので、『無電解ニッケルめっき』に興味のない方は記事をスルーして頂ければ幸いです。

オレが実用ツールでは(今年やっと購入した)KTCのツールボックスと同様に愛用しているブランドがトネ(TONE・前田金属工業)でして、まだ記事では紹介していないものの、エアーインパクトレンチもトネ製品を購入しております。
前職の頃に使っていた工具が主にトネで、職業柄、もの凄く過酷な使われ方だったにもかかわらず、工具に起因するトラブルや破損がまず無かった事から、個人的に信頼している次第です。

で、トネのインパクトレンチを購入したからには、ソケットもトネで揃えようと思い調べたところ、インパクト用ソケットは昨年モデルチェンジが行われており、ソケットの表面処理が従来の黒染めから『無電解めっき』に変更されたとの事。

もともとインパクト用のソケットは、強い打撃にも耐えられるようにハンドツール用のソケットよりも柔軟に作られています。
さらに、通常の工具においては防錆のための表面処理として一般的なクロームめっきなどのめっき処理は行われず、黒染めと呼ばれる処理で仕上げられています。
これは、クロームめっきの皮膜そのものも硬度が高いため、インパクトレンチの打撃でめっきが割れる可能性があるためです。

トネはその黒染め処理をめっきの一種である『無電解めっき』に変更した訳なんですが…その『無電解めっき』って何?というのを、身近なプロの方に聞いてみました。

 
プロ「正確には『無電解ニッケルめっき』の事だと思うけど…実際にやってみる?」

 
…という事で、急遽、実演してもらう事になりまして、モデルチェンジで安売りされていたトネの旧モデル、黒染め処理のソケットを数個、購入した次第。
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右の4個が実演用に購入した旧モデルで、左の2個は実用&比較するために購入した新モデルです。
ちなみに以前紹介したネジザウルスGTと一緒に買っていたんですけどね。

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さて、こちらがほぼ処理前のいわゆる黒染めの状態。
まずは黒染め処理を薬品(確か塩酸を使用)で綺麗に落とします。
それから、表面処理前の洗浄工程(めっき用の設備を利用)を経て、やっと準備完了。

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一定の高温に保った無電解ニッケルめっき用の薬液(写真の緑色の液体)に材料を投入します。
この薬液はニッケルが溶け込んでいるもので、化学反応で金属表面にニッケル成分が付着していきます。

無電解ニッケルめっきの利点として、薬液に触れている金属面全体に均等な厚さでニッケル皮膜が付いていくため、素材の状態が良ければどんな複雑な形状のものでも全体に均一な膜厚でめっき処理ができるそうです。
より低コストで一般的な電気めっきの場合、素材の形状によって電気の流れ方が変わるため、全面に均一な膜厚でめっき処理を施す事は不可能なんですよね。

難点としては…薬液がちょっと高価(そもそも元になるニッケルも高価)で、薬液の濃度によって処理時間が変わるため、連続で作業する場合は一定の品質を維持するのはなかなか大変な模様。
装飾めっきとして一般的なクロームめっきほど高価では無いにしても、低コストとは言い難いハズなんですが、トネの新モデルのソケットは何と旧モデルと基本的に同価格だったりします。
トネの企業努力、おそるべし…。

話を戻して、こちらが30~40分ほど浸けた後の完成品。
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めっき被膜は数マイクロメートル(いわゆるミクロン。1マイクロメートルは0.001ミリメートル)という厚さのため、下地の形もそのままに出ます。
結果、トネらしい梨地のソケットとなりました。

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新モデルのソケットと並べてみた感じも、見た目はほぼ同じですね。
で、旧モデルの4個のソケットを全て無電解ニッケルめっき処理したんですが…。

 
プロ「ちなみに、無電解ニッケルめっきの後に金めっきも付けられるけど、やってみる?」

 
…こんな経験、滅多にできないし、やらなかったらオトコじゃないッスよねー!

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金めっきの薬液はまさかの無色透明。
…ただし毒性のある劇薬で、しかもこのビーカー1杯ぶんで驚きの金額。
さすがに薬液の元が金(ホンモノの金)だと、少量とはいえ超高価。
誤ってビーカー割ろうものならイロイロと大惨事です…。

dscf919c.jpg
無電解ニッケルめっき済みのソケットを改めて綺麗に洗ってから投入。
表面に少しでも油分などの汚れが残っていると綺麗にめっきが乗らないようです。
でも、上手くいけばみるみる金色に変化していくので面白いです。

金めっきの場合は見た目から判断するそうで、今回は数分浸けただけでこの状態になりました。
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見た目は金めっきは薄めの方が光沢が出て良いそうで、あまり長く浸けすぎると黄色く安っぽい色になってしまうようです。
…実際のコストとしては長く浸けるほど金が厚くなって高価になる訳ですけどね。

そして完成したソケット達と、実戦で使う予定のトネ新モデルのソケット2個。
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1個は比較用に無電解ニッケルめっきのまま残し、3個は実験も兼ねて金めっき化されました。
…さすがにこれらは勿体なくて実戦では使えませんし、オレの自慢の宝物リストに追加です。

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うえいぱうわ

これはなかなか面白いですね。
無電解メッキを実際に目にしたのは初めてです。
私もそのうち、このメッキにお世話になる予定
なので、イメージつかめて助かりました(笑)
by うえいぱうわ (2011-08-06 22:05) 

TS

うえいぱうわさん>
こういう専門的な仕事は、なかなか実際に見る機会ってありませんよね。
オレもいい経験になりました♪

個人の依頼も受けてくれるめっき屋さんも多いですが、どこも決して安い金額には感じませんよね?
でも、実際に使用される薬液の値段とか作業にかかる手間を知ってしまうと、妥当というか、むしろ安すぎる気がしてきます。(笑)
by TS (2011-08-06 22:39) 

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